*

「拝見させていただきました」という敬語表現、間違って使っていませんか?

公開日: : 最終更新日:2015/01/09 140文字で変わる表現力 ,

上司や先輩、お客様から「これ確認しておいてくれる?」「よかったら読んでおいて」と書類や書籍を渡されることがあります。目上の方に対する返事なので「拝見させていただきます」「拝見させていただきました」と敬語を使いたくなりますが、「拝見させていただいた」という言葉遣いは誤り。「拝見させていただく」という言葉が誤りである理由を説明します。

「拝見させていただきました」という敬語はなぜ誤りなのか

book3

相手を敬う敬語は日本語独特の美しい表現ではあるのですが、相手を上にするのか(尊敬語)、自分が一歩下がるのか(謙譲語)、色々なルールがあって使い分けが難しいもの。厳格にルールを覚えるよりも、声に出して正しい表現に馴染む方が実践的であると言えます。「拝見させていただく」という言葉が誤用であることを知ったうえで「拝見します」「拝見しました」という正しい表現を声に出して覚えてしまいましょう。

「拝見させていただく」という表現は二重敬語になるので誤り。シンプルに「拝見します」「拝見しました」と無駄を削いだ表現を覚えておく

「拝見」という言葉には「拝む」という字が含まれています。

拝むくらいですから、これが敬意を込めた表現であることは理解できますよね。「いただく」という言葉も「いただきます」と手をあわせてご飯を食べ始めることを連想すれば、やはり敬意を含んだ表現であることがわかります。相手を敬う気持ちは大きければ大きいほど良いのでしょうが、それはあくまで気持ちだけのもの。「敬語+敬語」の二重表現は嫌味になってしまう可能性があるので、避けるべき言葉遣いであると言えるでしょう。

文法的な解説を行えば「見る」の謙譲語が「拝む」、「もらう」の謙譲語が「いただく」。謙譲語と謙譲語が続くと二重敬語になるので誤りという言い方ができるのですが、冒頭でお伝えした通り、尊敬語や謙譲語という言葉がかえって敬語への苦手意識を高めているような気もしています。「拝む相手だから」敬っている、「いただきます」と言うときにも手を合わせて拝むポーズをしているというこのイメージを思い浮かべて声に出してみる。すると「二回も拝むのはやりすぎかな?」と印象に残りやすいと思うのですが、いかがでしょうか。

「拝見致します」という表現も二重敬語になって誤りになるのか

「拝見させていただく」という表現は誤りであることを説明しました。では「拝見致します」「拝見致しました」という表現ではどうでしょうか。

議論があるのですが、今では「拝見致します」という表現は誤りではないと言われるようになってきています。文法的に考えると「する」という言葉の謙譲語が「致す」なので二重敬語になっているのですが、「致す」という言葉が一般に浸透した言葉であることから、ほとんどの辞書ではこの使用を認めるようになってきています。言葉は時代にあわせて変化するというその典型ですね。

ただしもちろん、ルールを柔軟に解釈したものが「拝見致します」という言葉であることを考えれば、使う相手や状況によっては神経質な対応を迫られることもあり得ます。「拝見」という言葉についてはシンプルに「拝見します」「拝見しました」という言葉ですぱっと言い切るリズムを身体に馴染ませてしまったほうが無難であると言えそうですね。





↑成人式や卒業式、入学式に似合う髪飾り特集はこちら
(コトバノ監修/【ギフトにも最適、桐箱付】)




関連記事

「時」と「とき」の使い分け ~困ったときに思い出したいその区別

時のまち、明石からお届けしているコトバノ。 明石市を通る東経135度の経度が日本標準時

記事を読む

領収書や請求書、手紙やメール、FAXに(株)や(有)という省略形は失礼なので使ってはいけない

うちの会社宛に送ってこられる請求書や手紙などには、株式会社や有限会社を省略した(株)や(有)といった

記事を読む

「ご教授ください」と「ご教示ください」の意味の違いと使い分け ~何を教えてもらうのか

自分のことを話すよりも相手に質問をして話をしてもらった方が会話が弾むのは皆さんもご存じだろうと思いま

記事を読む

「一時雨」と「時々雨」、「のち雨」の違いは何か ~天気予報の当たる確率

傘[/caption] 雨、続く関西。体調を崩している方もたくさん。低気圧が近づくとうちの熱

記事を読む

皇族の方が逝去されたときに用いる「崩御」「薨御」「薨去」「卒去」について

ひとが亡くなったときに用いる「逝去」という言葉について、以前このような記事を書きました。 「弊

記事を読む

書いている文章の意図が相手に伝わらないときに使いたい、「たとえば」の力。

資料などを作っているとき、文字が勝ちすぎないよう、相手にわかりやすいよう、図やグラフ、写真といったア

記事を読む

台風の当たり年なんて100%あり得ないその理由

台風の上陸って、北海道・本州・四国・九州の本土の場合のみを言うのだそうです。それ以外の島々については

記事を読む

「割愛する」には不要なものを省略するという意味はなかった ~「割愛」の誤用と正しい意味と

「時間の関係で、この部分の説明は割愛させていただきます」 プレゼンや会議などで、こんなフレーズ

記事を読む

「弊社」と「当社」の意味の違いと使い分け ~抗議のときは「当社」を使う!

私たちの会社という意味を表す熟語に「弊社」「当社」という言葉があります。今回はこの「弊社」と「当社」

記事を読む

挨拶は上品に

「高い席から失礼かと存じますが」「僭越ながら」と言ってはいけない理由 ~挨拶やスピーチで注意すること

挨拶は上品に[/caption] 壇上、スピーチなどを頼まれた人がよく「高い席から失礼します

記事を読む

Google

「了解しました」は失礼だから「承知しました」という表現を使うのがビジネスマナーだと習いました。本当ですか?

ビジネスマナーの教室や本では「了解しました」という言葉は、上司や先輩な

駅のホームの列車接近案内放送「危険ですから」と「危ないですから」、正しい使い方はどっち?

駅のホームで列車がやってくるのを待っていると、「まもなく列車がまいりま

「遊興費」の正しい読み方について ~「ゆうこうひ」か「ゆうきょうひ」か、誤読に注意!

家計簿をつけたり経理をしたりしていると「遊興費」という言葉が出てきます

「語るに落ちる」の誤用と意味と ~「語るほど価値のない人間だ」という誤った意味で理解していませんか?

「語るに落ちる」という言葉があります。「彼は悪いことばかりをして、もは

尻をまくるの読み方と誤用に注意! ~お尻を出して逃げ出すイメージがありますが!?

「尻をまくる」という言葉があります。「追い詰められて、彼はとうとう尻を

→もっと見る

  • 西端 康孝 / コピーライター・歌人・川柳家

    コトバノを運営している神戸のコピーライター西端です。川柳や短歌で日常を綴る短歌と川柳とマカロニとというブログや徒然に毎日を表現する川柳をこよなく愛する明石のタコというブログもやっていますので、良かったら遊びにきてください。書いたり取材したり講演の仕事も承っています。

    路傍という写真に言葉遊びを散りばめたiPhoneアプリもリリースしました。また、こういうiPhoneアプリを出して世に自身の創作を広めていきたいという方のお手伝いもしていますので興味があればこちらの記事をお読みください。
  • follow us in feedly
  • 画面の美しいtwitterクライアント。フリック操作で簡単にリストや特定ユーザーを切り替えることができるので、様々な情報に気軽にアクセスしたい方にオススメ。西端も利用しています。
  • カタカナ語の充実はもちろん、ビジネスや資格試験対策にも対応した幅広い収録語数。アニメーションによる筆順機能はお子さんをお持ちの方に特にオススメです。
  • 言葉の仕事をするとき、このブログを更新するときに欠かせないアプリになりました。
  • 言葉の繰り返しを防ぐだけでも、洗練された印象の文章になりますね。
  • コトバノの執筆者である西端がフォト詩集をiPhoneアプリで出しました。知識ではなく、感性に訴えかける写真と言葉たち。もし良かったら、もし良かったら…
PAGE TOP ↑