「珠玉(しゅぎょく)」の意味と誤用 ~「珠玉の長編小説」という使い方は誤り!
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140文字で変わる表現力 珠玉, 誤用
美しいもの、尊いものを表現するときに用いる「珠玉(しゅぎょく)」という言葉があります。海の珠(たま)、真珠。そして山の玉(たま)、宝石。海や山を産地とする言葉で構成された珠玉ですから、それで形容されるものが優れていないわけはないのですが、どうやらこの言葉も誤用が多いようです。それぞれの語源をもう一度確認して、使う場面を間違わないようにしましょう。
珠玉(しゅぎょく)の誤用に注意 ~真珠と宝石はどんな大きさ?
珠は、貝類の内にある美しい丸いたまのこと。代表的なものが真珠です。そして玉は、山で採れる美しい石のこと、宝石のことですね。
真珠と宝石の大きさをイメージしてみてください。それは、手のひらにころんと乗るような、とても小さなものだったのではないでしょうか。
珠玉(しゅぎょく)とは、美しく立派で優れているものを形容するときに使う言葉。ただし、真珠や宝石を語源とする珠玉という言葉は、大きなものを形容するときには用いない
美しく優れたものを形容するときに使うのが珠玉という言葉。しかし、真珠や宝石がとても小さなものであるように、珠玉という言葉は大きなものを形容するときには用いません。「珠玉の短編」という言い方はできても「珠玉の長編小説」という言い方はできませんし、「珠玉を散りばめたような」という表現はできても「珠玉の大作」「珠玉の交響曲」といった表現はできませんので注意が必要です。
珠玉に「高価なもの」という意味はあるのか?
珠玉の原義は真珠や宝石という美しいものでした。真珠や宝石のイメージから「美しくて高価なもの」という連想をしてしまいがちですが、珠玉には金額的に高価で価値があるという意味はありません。珠玉は芸術作品を表するときに使われることが多いようです。
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