*

「押っ取り刀(おっとりがたな)で駆けつける」の誤用と正しい意味と ~おっとりしてません!

公開日: : 最終更新日:2014/10/09 140文字で変わる表現力 , , ,

「押っ取り刀(おっとりがたな)で駆けつける」という表現を「ゆっくり落ち着いて行く」という意味で考えてしまうと誤用。「おっとり」という言葉は「ゆったり」「ゆっくり」「落ち着いている」という意味を持つ副詞ですが、「押っ取り刀」と書くときは違う意味になるので注意が必要です。

誤用されることの多い「押っ取り刀(おっとりがたな)」の正しい意味は

katana

「押っ取り刀(おっとりがたな)で駆けつける」は「急いで駆けつける」という意味。「ぶらぶらと行く」「ゆっくりと向かう」という意味ではありません。

「押っ取り刀で駆けつける」とは「取るものも取りあえず急いで駆けつける」という意味。ゆっくり向かうという意味で使うのは誤り。

「押っ取り刀」の「押っ」の部分は「押し」という接頭辞が変化したもの。「押し」には「無理に~する」「強いて~する」という意味があります。

「嫌なことを他人に押し付ける」や「この意見で押し切った」という表現で用いる「押し」ですね。「おっ」に変化した表現で馴染み深いものといえば「おっぱじめる」「おったまげる」などがあります。「押し」が「おっ」という形に変化すると動詞に勢いがつくのはイメージしやすいのではないでしょうか。「押し」が「おっ」に変化した場合は、動詞を強調して「勢いよく~する」という意味になるということを確認しておいてください。

「押っ取り刀で駆けつける」が「急いで行く」という意味になる理由

「押っ」が「勢いよく」という意味、「取る」が「刀を取る」ことはわかりました。では、勢いよく刀を取ることが急いで行く意味になるのはどうしてなのでしょうか。

時代劇を思い浮かべると、通常、武士たちは刀を左腰にさしています。これは利き腕が右手であるため、左側にさしていたほうが抜き差しを行いやすいという理由によるもの。余談ですが武家に生まれると、左利きであっても必ず右利きに矯正されたそうです。

そして、人の集まる場では敵意がないことを周囲に示さねばなりません。つまり、刀を扱いにくい身体の右側に置くことが作法とされたのです。この状態で有事になると、武士たちは左腰に刀をさし直す時間も勿体なく、右手に持ったまま(取るものを取ったまま差すことなく)急いで立ち上がり場に向かっていきました。本来は腰にさすものを、右手で掴んだままに走り出すから「取るものも取りあえず」。そうして「押っ取り刀」が「急いでいる」「慌てている」様子を表すようになったわけです。

そういえば、武士は身体を横にして眠るとき、利き腕(右手)を枕にしていたそうです。これでは急襲されたとき、右手が痺れて使い物にならない気がするのですが、武士にとって利き腕を斬られるということは当時致命的なことでした。武士として生きていくため、万が一斬られるとしても利き腕ではない方を…という意味で左手を上にして身体を休めたというのは考えさせられる話ですね。


▼関連の深いこちらの記事もどうぞ▼

関連記事

文化庁

十分と充分の違い、使い分け ~憲法では「充分」を使っているけれど

十分と充分という漢字も使い分けが難しいですよね。憲法では「充分」という漢字が使われています。

記事を読む

「探す」と「捜す」の意味の違いと使い分けについて ~さがしたいものが見えているかどうか

「探す」と「捜す」という言葉は、どちらも読み方が同じであるため、その意味の違いと使い分けが紛らわしい

記事を読む

「彼は涼しい顔をしている」という表現に注意 ~「涼しい顔」の誤用と正しい意味と

「皆が怒られていても、彼だけは涼しい顔をしている」「彼女はどれだけ罵倒されても涼しい顔だ」と、涼しい

記事を読む

ツッコミを意識した言葉の選び方が会話を生み出す、その実践

新しいクラス、職場、組織。最初はお互いのことがよくわからないなかで、次第に自分の居場所を見つけていく

記事を読む

no image

「温かい」と「暖かい」の使い分け – 心は寒くて冷たくて。

今日は、あたたかい話題をお届けします。 「温かい」と「暖かい」の使い分けは、それぞれ、反対の

記事を読む

no image

「余計なお世話じゃ!」を意識して作る会話の台本。

「今なら1000円引きでお得ですよー、良かったらいかがですか?」 これってつまり、売り手の論理

記事を読む

「珠玉(しゅぎょく)」の意味と誤用 ~「珠玉の長編小説」という使い方は誤り!

美しいもの、尊いものを表現するときに用いる「珠玉(しゅぎょく)」という言葉があります。海の珠(たま)

記事を読む

「弊社社長が逝去いたしました」という言葉を使ってはいけない理由

仏像![/caption] 「死」は忌み嫌うべき言葉で、直接的な表現は避けるべきとされてきました

記事を読む

「秋味(あきあじ)といえば秋刀魚だよね」という表現が誤りである理由 ~秋味とは

秋刀魚や栗、芋やキノコなど様々な食材が美味しく感じられるようになる季節、秋。 ところで、秋の味

記事を読む

waraji

「二足の草鞋(わらじ)を履く」の意味と誤用と ~否定的な印象を抱かれないようにする複業時代の自己紹介のコツ

働き方革命が進み、副業(複業)を認める会社も増えてきました。 たとえば昼間は会社勤め、夕方から

記事を読む

Google


▼よく読まれている記事▼


kokkaigijidou
更迭(こうてつ)、解任、辞任の意味の違いと使い分けについて ~クビにするのはどの言葉?

たとえば大臣が不祥事を起こしたりすると、「首相はA大臣を更迭(こうて

「老舗(しにせ)」という言葉の意味と由来を紹介します

代々続いているお店のことを「老舗(しにせ)」と言いますが、今回はこの

kaifuku
「回復」と「快復」の意味の違いと使い分け ~快復と書いてしまうと誤用になってしまうのか

この記事を書いている今、実は頸椎間板ヘルニアで苦しんでいて、リハビリに

bankokuki
「万端」と「万全」の意味の違いと使い分け、誤用について ~「準備万端」と「準備万全」、正しいのはどっち?

「旅の用意は全部できたよ、さぁ出発しよう!」 このように、あらゆ

tenteki
「お休みさせてください」「お電話します」の「お」は必要かどうか、誤用ではないか、敬語として適切かどうか考えてみよう

欠勤の連絡をするときなど、「お休みさせてください」「お休みさせていただ

→もっと見る

PAGE TOP ↑