*

「やるせない思い」を「やるせぬ思い」と書いていませんか? ~やるせないの意味と誤用と

片思いの気持ちなどを表現するときに「やるせない気持ち」と書くことがあります。「やるせない」とは「思いを晴らすことができず切なくて悲しい」という意味ですが、「ない」の部分を変化させて「やるせぬ気持ち」と書いてしまうと誤用になります。「果たせない夢」を「果たせぬ夢」と書くのは問題ないのにどうして「やるせぬ」と書いてしまうのは誤りになってしまうのでしょうか?

「やるせない」を「やるせぬ」と書いてしまうと誤用になってしまう理由

loveletter

「やるせない」を「やるせぬ」と書くと誤用になってしまうのは、「やるせない」という一語で形容詞になっているからです。

切なくて悲しいという意味の「やるせない」を「やるせぬ」と書いてしまうのは誤用。「やるせない」という一語で形容詞になっていると覚える

上述した「果たせない」という言葉の場合は「果たす」という動詞に打消しの助動詞「ない」が伴っています。動詞を打ち消す助動詞は「ない」以外に「ぬ」もありますので、この場合は「果たせない」と書いても「果たせぬ」と書いても同じ意味になります。

それに対して「やるせない」の「やるせ」は動詞ではありません。「やるせ」という名刺に否定の形容詞「ない」が伴ったもの。「美しい」という形容詞で考えてみましょう。「美しい」という言葉は「美しかろう/美しく/美しい/美しい/美しけれ」と変化します。どこにも「ぬ」はありませんね。「ない」という形容詞も同様に変化しますので「やるせ+ない」の「ない」が「ぬ」になることは出来ないのです。

「果たせぬ」や「許せぬ」という言葉と音の響きが似ているために起こった誤用。心情を表現するときにこの「やるせない」という言葉はよく用いますし、日本人は五七調の単語を好みやすいのでつい「やるせぬ思い」「やるせぬ気持ち」などと変化させてしまう癖のようなものがあるのだと思いますが注意したいですね。

「やるせない」の「やるせ」の意味って何ですか?

「やるせない」の「やるせ」は名詞であると説明しました。「やるせ」は漢字で書くと「遣る瀬」となります。

「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」という言葉もある通り、「瀬」には機会、立場という意味があります。「遣る瀬ない=与える機会がない=思いを晴らす方法や施すべき手段がない」と連想して「思いを伝えられず、晴らすことができず、切なくて悲しい」という意味になっていったのだと考えるとわかりやすいでしょう。


▼関連の深いこちらの記事もどうぞ▼

関連記事

「話のさわり(触り)」の誤用と正しい意味と ~最初の部分という意味ではない「さわり」

「時間の関係もあるし、話のさわりの部分だけでも聞かせてよ」という風に頼まれて、伝えるのはどの部分でし

記事を読む

「御社」と「貴社」の違いと使い分け ~就活のときに覚えたルールで大丈夫? 履歴書のコツとは?

就職や転職活動のときに履歴書を書いて送るのは一般的。応募先企業のことは「御社」か「貴社」か、どちらで

記事を読む

「黄昏れる」の本来の意味とは ~夕陽の美しい島根県立美術館の閉館時間、ご存知でした?

夕暮れ時、海岸。物思いな顔をした友人に「何を黄昏れてるのー?」なんて話しかけたこともあるのではないで

記事を読む

泥棒の来ないラーメン屋さんの秘密

どろぼうさんへ ここからはいっても、 うちのお店にはお金はありません。 たべにきてね。 なんて

記事を読む

kagetsu

「佳境に入る」「佳境を迎える」という表現の意味と使い方、誤用について ~仕事が佳境を迎えた、とは!?

「みかんの収穫が佳境を迎えた」という風に用いられる「佳境」という言葉は、「みかんの収穫がもっとも忙し

記事を読む

「拝見させていただきました」という敬語表現、間違って使っていませんか?

上司や先輩、お客様から「これ確認しておいてくれる?」「よかったら読んでおいて」と書類や書籍を渡される

記事を読む

末長く二人の幸せを祈ってはいけない理由 ~長いと永いの違い

結婚式でピアノの演奏を頼まれたことがあります。 ピアノ演奏[/caption] 演奏直

記事を読む

「上には上がいる」は間違いで「上には上がある」が正しい使い方だった!

福沢諭吉![/caption] 財布が分厚い理由は、中にたくさんのポイントカードが入っている

記事を読む

「やさぐれ」に「投げやりになる」という意味はなかった! やさぐれぱんだで覚える「やさぐれ」の意味と由来

やさぐれぱんだという漫画が流行したことがありますが、この「やさぐれ」という言葉には「投げやりになる」

記事を読む

「葬式、結婚式は恙なく(つつがなく)無事に終了しました」と書いてはいけない理由

誤用と呼ばれるような表現であっても、最近はその誤りが一般化してきていることもあって耳に入ってくる音だ

記事を読む

Google


▼よく読まれている記事▼


  • 西端 康孝 / コピーライター・歌人・川柳家

    コトバノを運営している神戸のコピーライター西端です。川柳や短歌で日常を綴る短歌と川柳とマカロニとというブログや徒然に毎日を表現する川柳をこよなく愛する明石のタコというブログもやっていますので、良かったら遊びにきてください。書いたり取材したり講演の仕事も承っています。
PAGE TOP ↑