*

「ご進言ありがとうございました」と使っていませんか? ~「進言」の誤用と意味に注意

「ご進言(しんげん)ありがとうございました」というフレーズを使ったり聞いたりしたことはないでしょうか? お店や会社でお客様からご要望やご意見を承ったときにこのフレーズを用いるように指導しているところが実際にいくつかあったのですが、「ご進言ありがとうございます」「ご進言ありがとうございました」という言葉をお客様に対して使うのは誤り。今回はこの「進言」という言葉の正しい意味について確認します。

「ご進言ありがとうございます」という言葉はなぜお客様に使ってはいけないのか

office3

進言という言葉の意味は目上の人に意見を述べること。部下が上司に、後輩が先輩に意見を言うなど、下から上に対して「言わせてください」という態度で臨むときに用いる表現です。

「進言」とは、上の立場の人間に対して意見を述べること。お客様に対して「ご進言ありがとうございます」という表現を用いると、相手を下に見ていることになってしまう

「ご進言ありがとうございます」という言葉をお客様に対して使ってしまうと、「(下の立場であるあなたがそれはどうも、わざわざ)意見をありがとうね」というニュアンスになってしまうということですね。お客様はわざわざ時間を割いてお店や会社のためにお気持ちを伝えてくださった。そこには最大限の感謝と敬意が向けられるべきなのに、お客様を下に見るような言動をしてしまうようではいけません。「貴重なご意見、確かに承りました。ありがとうございました」というような表現にしておくべきでしょう。

「進言」という言葉はどうして誤用されるようになったのか

進言という言葉を分解すると「進んで言う」と解釈することができるような気がします。「わざわざ伝えてくれるだなんて、時間も手間もかかるだろうに進んで言ってきてくださってありがとうございます」という漢字のイメージから、相手に対する敬意が含まれた表現であると誤解、誤用されるようになったと推測することができます。

字面から想像のできることが漢字の面白い点でもあるのですが、想像が事実を超えてしまっては意味がありません。進言とは目上の人に対して意見を述べるときに使うこと。「部長に改革案を進言する」「監督!僭越ながらメンバー起用について進言させてください」というフレーズを実際に声に出して馴染ませることで、「ご進言ありがとうございます」という誤用のイメージを上書きしてほしいと思います。なお、この例文でお伝えしましたが、目上の方に対して何かを伝えるときは「僭越ながら」という言葉を枕につけたほうが良いでしょう。


▼関連の深いこちらの記事もどうぞ▼

関連記事

なぜ「情けは人のためならず」は正しく使われるようになった? ~反対の意味になる諺は何?

「情けは人のためならず」の正しい意味はひとに対して情けをかけていけば、まわりまわって、自分に戻ってく

記事を読む

「いそいそ」の誤用と正しい意味と ~急ぐ様子のことではなかった「いそいそ」の反対語は?

「彼はいそいそと出かけていった」という風に「彼は急いだ様子で出かけて行った」という意味で「いそいそ」

記事を読む

jyugyou

「べき」を文末に使うのは誤り ~「あなたは毎日努力するべき」という使い方をしていませんか?

古文の授業でならった「べし」という言葉は、今日でも、意志や教訓を表す文章に用いられることがよくありま

記事を読む

「万障お繰り合わせの上」という表現は招待するときや目上の方、お客様に使うのは失礼なのか?

招待状やDM、あるいは出席を求める呼びかけの文章に「万障お繰り合わせの上、ご参加ください」といった表

記事を読む

「足りない」と「足らない」はどちらが正しくて誤りか ~足りないと足らないの違いと使い分け

「物足りない」「物足らない」といった複合動詞でも使われる「足りない・足らない」。どちらの表現もよく見

記事を読む

知識の受け売りをする人に多く見られる語尾の特徴

成功しているように見える誰かは、そこに至るまで、きっといろんな失敗をしてきたと思うのです。本当に何の

記事を読む

ガラスの「十代」か「十台」か ~代と台の使い分け

8人目の光GENJIを自称していたこともある@bataです。 【送料無料】【ベストアルバムSA

記事を読む

kaifuku

「回復」と「快復」の意味の違いと使い分け ~快復と書いてしまうと誤用になってしまうのか

この記事を書いている今、実は頸椎間板ヘルニアで苦しんでいて、リハビリに通っています。数ヶ月様子を見て

記事を読む

「時を分かたず(ときをわかたず)」の誤用に注意 ~「すぐに」という意味ではない

「雨が降り出して、時を分かたず、彼は傘を持って飛び出して行った」 このように「時を分かたず」を

記事を読む

「お得な情報を配信します」と「売り言葉ばかりがウンザリするほどやってきます」の紙一重。

来店されたお客様にリピーターになってほしい。その想いから、メール会員募集という貼り紙や告知を店内で見

記事を読む

Google


▼よく読まれている記事▼


  • 西端 康孝 / コピーライター・歌人・川柳家

    コトバノを運営している神戸のコピーライター西端です。川柳や短歌で日常を綴る短歌と川柳とマカロニとというブログや徒然に毎日を表現する川柳をこよなく愛する明石のタコというブログもやっていますので、良かったら遊びにきてください。書いたり取材したり講演の仕事も承っています。
PAGE TOP ↑