NHKの放送用語委員会に、優しさに満ちた言葉たちを見つけた!
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140文字で変わる表現力, 紹介 NHK, 放送用語委員会
NHKには放送文化研究所という組織があります。
本格的なデジタル時代を迎えても、「豊かな放送文化を創造する」という公共放送の役割は変わりません。この目的の実現に向けて必要な調査研究を行うのが、 NHK放送文化研究所「文研」の役割です。文研は、世界に類を見ない、放送局が運営する総合的な放送研究機関として、昭和21年に設立されました。放送法でも、調査研究業務は番組制作と並んでNHKの本来業務と定められています。
放送内容に関するさまざまな研究、日本および海外各国の放送事情調査、それに視聴者の意向を把握する世論調査などの成果は、NHKの番組編成や制作など放送そのものに役立てられるだけでなく、公共放送の業務運営の基本方針を決定する際にも役立っています。調査結果は公表するなど、成果の社会還元にも努めています。デジタルテレビ新時代に、より豊かな放送文化を創造するため、文研は時代と社会に向き合い、多彩な分野での調査研究に取り組んでいます。
そのなかの放送用語委員会では、研究しあった成果を毎回わかりやすい形で公表してくれています。国語的な意味合いとしての善し悪しだけではなく、どちらの方が親しみやすい表現か、どの表現が人格を尊重しより優しい響きとなるかなど、事例を含めて紹介されています。
放送用語委員会では、優しい表現も研究されている
・「火事があり1人の遺体が見つかりました」- 事実関係に問題はないが、亡くなった人に関する情報は、死者の尊厳を考えて、なるべく人を主体にした表現が望ましいので「1人が遺体で見つかりました」。
・震災報道のときは「がれき」という表現を使わないなどの配慮をした。被災した人たちの財産や思い出がつまったものを指して「がれき」と言ってしまうと、邪魔者というニュアンスが出てしまうように思う。「壊れた建物」など、具体的に言いかえた。
・「被災者」「被災地」「避難者」という言い方は、被災した一人一人の人格を認めていないように感じられるのではないか。
こうするべきであるという表現の方向性についても検討されていますが、こんな風に表現してしまうと不快な思いを与えてしまうのではないかという、委員一人一人の苦悩や葛藤、優しさまでが伝わってくるような内容の回もあります。
正しい日本語を使っているかどうかという以上に、それがどんな風に人の心に響くのか、届くのか。
放送のプロたちも、表現のひとつひとつに温度が伴うのかどうかを研究しています。どう伝えたいか、ではなく、どう伝わるだろうか、という相手を主体にした優しさに満ちた表現を意識していきたいですね。
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